文化財・文化遺産の持続可能な保存事業には、周辺地域住民の文化財にたいする理解と協力が必要です。しかし、国民文化、世界遺産としての遺跡の修復・保存活動では、社会教育の充実している少数の国をのぞき、地元住人への文化財の啓蒙教育活動については、必ずしも十分とは言えないのが現状です。
しかし、文化財・文化遺産とはもともとそれを生み出した地域の歴史的・文化的文脈にそったものである以上、地元住民の協力は必要不可欠であるといってよいでしょう。ですが残念ながら、そうした地域住民とともにあるべき文化財保護の枠組みがきちんと機能している国のほうが少数なのです。たとえばカンボジアでは、これまでに文化財の保全監視や盗掘防止などはあくまでも法の枠組みのなかで、逸脱者に対する処罰として制度化されており、地元住民に対する文化財・文化遺産の地域的な位置づけや、自らのアイデンティティに根ざした文化遺産教育などの啓蒙活動にたいする体系的なな取り組みはありませんでした。
文化財とともにある地域住民は、単なる文化的景観の構成要素ではありません。こうした人々は、これまでも文化遺産の主体的な担い手であり、将来の遺産保護のキー・アクターなのです。
そこで当研究所では、文化財・文化遺産のなかでも、特に顧みられることのない土中に埋納されたまたの遺跡の価値とその調査・保存の意義について、小学校段階からの積極的な啓蒙活動により、地域住民の自発的な文化財保護運動を喚起するための活動をおこなっております。
2016年度の文化遺産教育プログラムについては改めてご案内いたします。